八戸製錬株式会社八戸製錬所

高度な製錬技術で
資源循環の中核機能を果たし
ゼロエミッション社会の実現に貢献

武田 哲 さん

八戸製錬株式会社八戸製錬所
代表取締役社長/武田 哲 さん

国内唯一、
世界最大の生産量を誇る
ISP亜鉛製錬所

 当社は、三井金属グループの中核企業のひとつとして、国内で唯一、熔鉱炉を使った製錬法「ISP法式」で亜鉛と鉛をつくっている製錬所です。生産能力は年間11万2千トンで、ISP製錬所としては世界最大、また生産効率も世界最高となっています。

 ISP製錬では、精留亜鉛と蒸留亜鉛の2種類の亜鉛を生産することができ、精留亜鉛は自動車用鋼板、蒸留亜鉛は道路標識柱、ガードレールなど屋外構造物の防錆用めっき材料として広く使用されています。近年では、新国立競技場の屋根鉄骨のめっきにも当社の蒸留亜鉛が使用されました。

 蒸留亜鉛をつくれるのは日本では当社だけですので、八戸製錬がなくなってしまうと屋外構造物のめっきに必要な亜鉛が国内で製造できなくなってしまうということで、私たちは大きな製造責任を担っています。ですから、日本中のユーザーにご迷惑をおかけすることのないよう安定操業を続けることを第一としながら、現在は、業務改革のためのDXによる一層の生産効率化や、燃料コークスの使用量を削減し代替エネルギーの可能性を追求するなど、時代の要請であるカーボン・ニュートラルへの対応にも取り組んでいます。

原料を焼き固める焼結機

資源循環リサイクルの要の機能を担う

 当社は、経営理念として「製錬技術を生かして持続型社会の構築に貢献」することを掲げています。これは、耐食性に優れた亜鉛の生産により鉄鋼製品や建築物の長寿命化に寄与することだけにとどまりません。

 現在、当社で使用する原料のほぼ半分は、リサイクル原料で賄われています。ISP製錬所では、電解方式など他の製錬法では処理できない多種多様な不純物の混ざった廃棄物を低コストで再利用することができます。当社で製造した亜鉛は、鉄鋼会社やめっき会社で使われ、さらに自動車会社や建材メーカーなどで製品化されますが、寿命がきて廃棄物となった製品が鉄鋼会社の電気炉で溶かされ、そこで発生した亜鉛を含有する製鋼煙灰や亜鉛滓がリサイクル原料として再び当社に戻ってきます。つまり当社でつくった亜鉛が、世の中をぐるぐる循環し資源循環リサイクルが構築されているわけです。

 さらに当社では、ISP製錬技術の特長を活かし、産業廃棄物のリサイクル製錬もおこなっています。社会生活で発生する多様な廃棄物に含有する金、銀、鉛、銅、錫などの金属を採収し再資源化するもので、この点でも当社は、ゼロエミッションに向けた壮大な資源循環の要としての機能を担っています。

現場作業も保護具をしっかり着用し安全作業を徹底

工業系の教育機関が多い八戸
工業集積を活かした新たな取組も

 八戸製錬は、非鉄金属の需要が拡大した高度成長期の昭和42年に設立され、翌43年に操業開始しました。

 設立当時、八戸では臨海工業団地の整備が進み、鉄道・工業用水がすでに敷設され、大型船の着岸が可能な工業港の建設も始まっていました。こうしたインフラ条件のほか、工業系の学校が多く教育水準が高いこと、さらに夏場の気温が低く製錬という高温環境の仕事に適していること、日本海側に比べて冬場の積雪や海がシケることも少ないなど、良好な気象条件も八戸立地の決め手となったようです。

 現在、臨海工業地帯をはじめ八戸地域には多くの工場が立地していますので、製品の相積み出荷によるコスト削減や、各工場から出る廃棄物を相互に再利用することで廃棄物ゼロを目指す取り組みなども進んでいます。こうした工業集積のメリットを活かせるのも八戸の特長だと感じています。

 一方で、少子化や進学率の上昇により、地元に定着する若者の数は減少しています。これは一企業で解決できる問題ではありませんので、今後は、行政や教育機関、企業が連携した地域全体としての対応が重要となるでしょう。

 ただ、そのような状況の中でも、地元に就職を決めた人の覚悟は強く、真面目で責任感もあり、会社を長年にわたり支える戦力になってくれています。私たちとしては、社員の健康管理に力を入れた健康経営に努め、定年まで元気に働いてもらえるよう大事に育てていきたいと考えています。

亜鉛の製品

plofile

会社名
八戸製錬株式会社八戸製錬所
県内所在地
〒039-1161
青森県八戸市大字河原木字浜名谷地76
立地年月
1967年1月
従業員数
267名(2023年4月1日現在)
事業内容
非鉄金属製造業
主要製品・サービス
亜鉛・粗鉛・硫酸・石こう・スラグ

掲載年月:R5.11